中小企業経営強化税制A類型(生産性向上設備)の対象になり得る設備を、鈑金塗装・整備工場向けに、塗装ブース・リフトを中心に洗い出した。
4本の並列調査のあと、別の検証役が一次資料(中小企業庁の手引き・Q&A・工業会リスト、国税庁、財務省大綱)で17項目を突き合わせた。
「対象になり得る」と「実際に証明書が出る」は別物である。後者は機種ごとにメーカーが工業会へ申請して初めて決まる。
判定は「制度の要件と一次資料から見て対象になり得るか」。最終的には、機種ごとの証明書と、税理士による資産区分の判断で決まる。下限額は1台(通常1単位で取引される単位)あたり。据付費・試運転費は含めてよい。補助金を使う場合は、圧縮記帳した後の額で判定する。
| 設備 | 判定 | 資産区分(想定) | 下限 | 証明書の出どころ | 条件・注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗装・BP | |||||
| 塗装乾燥ブース(大型)即時償却の認定事例あり | 対象可の見込み | 機械装置 | 160万円 | 機械装置「53 自動車整備業用設備」の枠。発行は5団体のいずれか(メーカー経由) | 国交省の認定事例に、ブース単独で即時償却を使った例(栃木)と、ブース増設で即時償却を使った例(福岡・1台15分短縮)がある。建屋と別に据え付ける独立型が前提。建屋一体型・ピット式・基礎工事は建物/構築物に分かれ、その部分は対象外になり得る。欧州輸入機は代理店経由の申請。 |
| プレップステーション・下地ブース | 条件付き | 機械装置 | 160万円 | 同上 | ブースと同じ扱い。単体で160万円に届くかが分かれ目。 |
| ミキシングルーム | 要確認 | 機械装置か建物 | 160万/60万円 | 不明 | 部屋として建て込むと建物扱いになり、対象外寄り。 |
| 赤外線・遠赤外線乾燥機 | 要確認 | 機械装置 | 160万円 | 不明 | 単体で160万円に届かない機種が多い。 |
| シンナー・溶剤再生機 | 要確認 | 機械装置 | 160万円 | 不明(メーカー確認が必要) | 生産性の指標を何で示すか(回収率・処理時間など)をメーカーに確認する。 |
| 調色機・ガン洗浄機・集塵機 | 要確認 | 器具備品か機械装置 | 40万/160万円 | 不明 | 単体では下限未満のものが多い。ブースの付属品として一体で取引されるなら合算できる。 |
| フレーム修正機・定盤 | 要確認 | 機械装置 | 160万円 | 不明(53の5団体のどれか) | メーカーに、どの団体で証明書を取るかを確認する。 |
| 三次元計測機 | 対象可の見込み | 器具備品(測定機器) | 40万円 | JASEA | ガイドラインに導入例あり(400万円)。販売開始6年以内が条件。 |
| スポット・アルミ・スタッド溶接機 | 要確認 | 機械装置か工具 | 160万/40万円 | 不明 | A類型で対象になる工具は「測定工具・検査工具」だけ。溶接機を工具に区分すると対象外。 |
| リフト・整備・検査 | |||||
| 2柱・4柱・シザース・門型・フラットリフト | 対象可の見込み | 機械装置 | 160万円 | JASEA(記入例がリフト) | ガイドラインに導入例あり(200〜300万円)。リフトで即時償却を使った認定事例あり(秋田)。旧モデル比で年平均1%以上の生産性向上を示す根拠が必要。下限は1台ごとに判定する。2柱リフト2台で合計180万円でも、1台が160万円未満なら対象外(バンザイ掲載の制度資料の例)。 |
| 埋込式・ピット式リフト | 条件付き | 本体=機械装置/躯体=構築物・建物 | 160万円 | JASEA | 本体と、ピット・コンクリートの躯体を分けて計上する。躯体は対象外になり得る。 |
| アライメントテスター | 対象可の見込み | 器具備品(測定機器) | 40万円 | JASEA | ガイドラインに導入例あり(500〜600万円)。 |
| 複合試験機・ブレーキ/ヘッドライトテスター | 対象可の見込み | 器具備品 | 40万円 | JASEA | ガイドラインに導入例あり(トリプルテスター200〜300万円)。ライン一式か個別かを整理する。 |
| 門型洗車機 | 対象可の見込み | 機械装置 | 160万円 | 53の5団体のいずれか | ガイドラインに導入例あり(400〜500万円)。 |
| タイヤチェンジャー・バランサー | 条件付き | 機械装置か器具備品 | 160万/40万円 | JASEA想定 | 単品で下限に届かない機種は対象外。 |
| エーミング(ADAS)機器 | 要確認 | 器具備品 | 40万円 | 不明 | 新しい分野のため、比較できる旧モデルが無いと証明しにくい。 |
| スキャンツール・診断機 | 要確認 | 器具備品 | 40万円 | 不明 | 40万円未満の機種が多い。その場合は少額減価償却資産の特例の方が使いやすい。 |
| コンプレッサー・ドライヤー・エアコンガス回収機 | 要確認 | 機械装置 | 160万円 | 不明 | メーカーに確認する。 |
| 建物附属設備・エネルギー・ソフト(作業場で使うもの) | |||||
| 業務用空調(作業場) | 対象可 | 建物附属設備 | 60万円 | 日本冷凍空調工業会ほか | 販売開始14年以内。事務所用は対象外。作業場内の休憩室・トイレの設備は対象になり得る。 |
| LED照明(工場) | 対象可 | 建物附属設備 | 60万円 | 日本照明工業会 | 1単位60万円以上が必要。 |
| 受変電設備(キュービクル) | 対象可 | 建物附属設備 | 60万円 | 日本配電制御システム工業会 | ブース増設で電力容量を上げる場合の候補。 |
| 太陽光発電(自家消費)・蓄電池 | 条件付き | 機械装置か建物附属設備 | 160万/60万円 | 太陽光発電協会・電池工業会 | 売電が発電量の2分の1を超えると対象外。認定申請時に報告書が要る。 |
| 整備管理・見積・基幹ソフト | 条件付き | ソフトウェア | 70万円 | 情報サービス産業協会(JISA) | 「設備の稼働状況などを集める機能」と「分析・指示する機能」の両方が必須。発行に4〜6週間。コグニセブンの可否は不明。 |
| 対象外(はっきりしているもの) | |||||
| 車両(積載車・代車・営業車) | 対象外 | 車両運搬具 | — | — | Q&A共-27で明記。 |
| 構築物(舗装・フェンス・ピット躯体・基礎) | 対象外 | 構築物 | — | — | A類型の対象資産に入っていない。 |
| 中古設備・展示機 | 対象外 | — | — | — | 新品のみ(Q&A共-5)。 |
| 事務用PC・複合機・本店/福利厚生の設備 | 対象外 | — | — | — | 生産等に直接使うものに限る(Q&A共-2)。 |
| リースで入れる設備 | 条件付き | — | — | — | 所有権移転外リースは即時償却できず、税額控除のみ。オペレーティング・リースは対象外。 |
国交省が公開している「経営力向上計画 認定事業者の取組事例」(自動車整備業)から、ブース・リフトの例を原文で確認した。即時償却は経営強化税制でしか使えない(A類型の工業会証明書か、B類型の経産局確認書が必要)。資料からは、どちらの類型だったかまでは分からない。
| 事業者 | 導入設備 | 利用した支援措置 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 松原自動車整備工場栃木県・指定工場・5名・令和2年4月認定 | 塗装ブース | 法人税の即時償却 | ブース単独で即時償却。いちばん直接的な実例。 |
| 福岡県の認証工場5名・国交省ガイドライン事例5 | 塗装ブース増設、排気装置、調色システム | 税額控除・即時償却 | どの設備にどちらを使ったかは書かれていない。 |
| 相馬自動車整備工場秋田県・指定工場 | リフト、フロンガス交換機 | 法人税の即時償却 | リフトで即時償却を使った例。 |
| 三昌自動車愛知県・指定工場 | 塗装ブース、エーミングツール | 税額控除 | 税額控除は、証明書の要らない投資促進税制(7%)の可能性もある。 |
| 和歌山県の指定工場国交省ガイドライン事例6 | 埋め込み式リフト、ヘッドライトテスター | 税額控除 | 同上。埋め込み式で即時償却を使った例は見つからなかった。 |
税制は「事業供用した日が属する事業年度」で使う。自社の決算月を確認し、どの期に供用するかを先に決めておく。例:12月決算なら、2026年12月31日までの供用は2026年の期、2027年1〜3月の供用は2027年の期になる。
①工業会証明書を出せるか ②どの団体で取るか ③型式の販売開始年。基礎・躯体工事を別の行に分けてもらう。
見積と同時設備を買う側(各店)は申請しない。JASEAは手数料3,000円(会員1,000円)、目安7営業日。団体により数日〜2か月。同じ設備を同じ年に複数台買うなら1枚でよい。
数日〜2か月自動車整備業の窓口は国交省。本社所在地を管轄する地方運輸局に出す(九州の加盟店は九州運輸局 自動車技術安全部整備課)。証明書を添付する。
認定まで1か月が目安「事業供用」は、据付・試運転が終わって稼働した日。先に買った場合は、取得から60日以内に申請書が運輸局に届くこと。
期限 2027.3.31即時償却か、税額控除10%か。どちらか一方。税務申告書に認定書の写しと証明書の写しを添付する。
決算時資本金3,000万円以下の中小法人を想定する(3,000万円超1億円以下は控除7%)。自社への当てはめは、必ず顧問税理士に確認する。
並列調査で出た主張を、独立した検証役が一次資料で判定した。正しい10件、正しいが補足ありの3件、表現・条件を訂正した2件、誤り1件、未確認0件(C8は原本の読み直しで訂正付きへ)。訂正は本ページの記述に反映済み。
| # | 主張 | 判定 | 確定した内容 |
|---|---|---|---|
| C1 | 期限は2027年3月31日 | 正しい | 手引き(R8.4.1版)p.2。「2028年3月末まで延長」は誤り。 |
| C2 | 工具・器具備品の下限が30万から40万円へ | 訂正付き | R8大綱に明記。適用開始日は附則を見ておらず未確認。国税庁No.5434はまだ30万円の表記のまま。 |
| C3 | 販売開始が機械10年・工具5年・器具6年・建附14年・ソフト5年以内、年平均1%向上 | 補足あり | 手引きp.3。工具は測定工具・検査工具に限る。 |
| C4 | 控除10%、上限は法人税額の20%、1年繰越 | 正しい | 国税庁No.5434。20%は投資促進税制の控除と合算した上限。 |
| C5 | 取得後60日以内なら救済 | 訂正付き | 「受理」ではなく、申請書が行政庁に到達すること(Q&A共-33)。 |
| C6 | 申請先は地方運輸局(九州は九州運輸局) | 正しい | 本社所在地を管轄する地方運輸局。九州は自動車技術安全部整備課。 |
| C7 | 整備機器の証明書はJASEAだけ | 誤り | リスト53は5団体(日本機械工業連合会・日本計量機器工業連合会・日本産業機械工業会・日本産業車両協会・JASEA)。日本自動車機械器具工業会(JAMTA)は0件。 |
| C8 | 塗装ブースは日本産業機械工業会 | 訂正付き | リストは製品名でなく「設備の種類」で並ぶ。BP工場のブースは「53 自動車整備業用設備」の枠に入る。発行団体は5つで、産機工と決め打ちする根拠は無い。 |
| C9 | 構築物・車両は対象外 | 補足あり | E類型では建物も対象になるが、売上高100億円超を目指す企業向けで、通常の加盟店には関係しにくい。 |
| C10 | 中古・貸付・事務用・福利厚生は対象外 | 正しい | Q&A共-2に自動車整備業の作業場の例示あり。 |
| C11 | 据付費は取得価額に含む。補助金は圧縮後で判定 | 正しい | Q&A共-6・共-7。 |
| C12 | 所有権移転外リースは控除のみ | 正しい | 国税庁No.5434。 |
| C13 | 400人超の除外は少額特例の話 | 正しい | 経営強化税制ではない。従業員400人以下なら無関係。 |
| C14 | 太陽光は売電2分の1超で対象外 | 正しい | 手引きp.2の注記。 |
| C15 | 投資促進税制も2027年3月31日 | 補足あり | 7%控除は資本金3,000万円以下のみ。 |
| C16 | 少額特例は40万円未満・年300万円・3年延長 | 正しい | R8大綱。 |
| C17 | 同じ資産で複数の特例は不可 | 正しい | Q&A共-16。設備が違えば組み合わせてよい。 |