0. このマニュアルの使い方
- 本書は、シューリーズ加盟店に共通する保険案件の「協定」(保険会社・アジャスターとの損害額の合意)の標準手順書です。シューリーズ共通マニュアルの3本目にあたります。
- 保険案件の受付(事故連絡・等級の説明・同意の節目)は「受付マニュアル 第6章」
- 保険案件の見積の作り方(保険案件の見積フロー)は「鈑金塗装見積もりマニュアル 第8章」(撮影の標準は同マニュアル第4章)
- 本書はその先、作った見積をどう合意まで持っていくか=協定交渉そのものを扱います。
- 新人はまず第1章〜第3章を通読してください。協定の場に立つ前に第4章〜第6章(交渉の理論的根拠)を、案件に応じて第7章〜第10章を拾い読みしてください。
- 金額・単価・係数・工数は各店の設定に従います。清田自動車(運営中核店)の実値は《参考例》囲みで示します。
- 本文中の
> 📷【画像挿入】の行は、後日画像を差し込む箇所です。 - 表記の統一:「鈑金」(「板金」とは書かない)。
- 本書の基本姿勢:協定は「戦い」ではなく、根拠にもとづく専門的な交渉です。感情的な対決・特定の保険会社への批判・根拠のない請求は、本書の目指すところではありません(第1章 1-4)。
各店で設定・調整する項目一覧(導入時に必ず埋める)
| # | 項目 | 自店の設定値(記入欄) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | レバレート(国産車/輸入車、指数協定用・時間協定用) | __ 円/h / ____ 円/h | 第6章。算定根拠資料も併せて整備 |
| 2 | 塗装材料の計上方式(材料比率 or 明細積算)と係数 | ______ | 第6章 6-3 |
| 3 | 協定の社内承認者(協定金額の最終決裁者) | ______ | 第2章 ステップ⑪ |
| 4 | 値引き上限の考え方(工賃税別分のみ・上限%等) | ______ | 第2章 ステップ⑩ |
| 5 | 未成約時(未修理・他店流出・買替・全損)の見積費用(区分別の税込定額) | 有 ・ 無 / ______ | 第2章 2-3。入庫確認書に明記。区分・基準は見積もりマニュアル第10章 10-3と統一 |
| 6 | 入庫確認書・立会確認書・損害確認シートの様式 | ______ | 第2章・第3章 |
| 7 | 代車・レンタカーの日額と車格ランク表 | ______ | 第8章 |
| 7-2 | 代車の有償/無償の別とレンタカー許可(わ/れナンバー)の有無・保有台数 | ______ | 第8章 8-1。無償の工場代車は保険請求しない |
| 8 | 第三者機関(DAA等)への調査依頼の判断基準・窓口担当 | ______ | 第9章 |
| 9 | 協定難航時のエスカレーション責任者(店長/代表) | ______ | 第10章 |
| 10 | 保険金の入金先の標準(お客様口座/当店口座)と説明手順 | ______ | 第2章 2-3・第11章 |
| 11 | 協定記録の保存先(書面・録音・メールの保管ルール) | ______ | 第10章 10-1 |
| 12 | 対物超過特約使用時の着工前確認書の運用 | ______ | 第7章 7-4 |
| 13 | 画像協定(リモート協定)の適用基準(対象とする損傷の範囲) | ______ | 第3章 3-5 |
第1章 協定とは何か ― 基本の考え方
1-1. 協定の定義
- 協定とは「協議して定める」こと。事故車の損害額(=修理費相当額)について、保険会社の損害調査員(アジャスター。以下 AJ)と当店が協議し、合意に至るプロセスを指します。
- 協定は修理着工前に成立させるのが原則です。金額が確定しないまま着工・納車まで進むと、交渉材料を失い、支払いを巡るトラブルの温床になります(第12章 NG集)。
1-2. 契約関係の整理 ― 誰と誰の契約か
協定交渉の出発点は、登場人物の契約関係を正しく理解することです。
| 関係 | 契約の種類 | 内容 |
|---|---|---|
| お客様 ⇄ 当店 | 修理契約 | 当店はお客様から修理を請け負い、お客様に修理代金を請求する |
| お客様(被害者) ⇄ 加害者・保険会社 | 損害賠償/保険契約 | 損害額の請求権はお客様のもの |
| 当店 ⇄ 保険会社 | 契約関係なし | 当店は保険会社の下請けではない。AJの損害調査に「協力する」立場 |
- 当店と保険会社の間に直接の契約・債権債務関係はありません。AJは修理の「買い手」ではなく、保険契約の履行のために損害調査の協力を仰ぐ立場です。この整理を押さえておくと、根拠のない減額要求に冷静に対応できます。
- 同時に、当店にも保険会社の損害額を決める権限はありません。損害額の請求権はあくまでお客様のものです。だからこそ協定にはお客様(当事者)の合意が必須です(第3章 3-4・第11章)。
- 示談交渉・過失割合・支払可否の交渉はお客様と保険会社(代理店)の間の話であり、当店が代理することはできません(弁護士法上の制約。受付マニュアル 第6章 6-2 と同じ線引き)。当店が担うのは修理の技術的説明(修理内容・写真・見積根拠)までです。
1-3. 行政指針 ― 国土交通省ガイドライン
令和7年3月4日に国土交通省(物流・自動車局 自動車整備課)が公表した「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」(以下「国交省ガイドライン」)は、本書全体の重要な参考基準(行政指針)です。指針自身が「規制的性質を有するものではない」と明記しているため法令のような強制力はありませんが、行政が示した価格交渉の物差しとして、「車体整備事業者が取り組むべき事項」の9項目(①〜⑨は原文の(1)〜(9)に対応)を常に手元に置いてください。
- 自社の責任と考えによる見積の作成(見積を保険会社に委ねるのではなく、自社の責任と考えに基づき提示できるようにする)
- 消費者物価指数のみならず人件費等の上昇も考慮した工賃単価の提案(自社の費用構造を分析し、人件費・電気代・材料費等の上昇率を考慮して工賃単価を設定する)
- 標準的な作業時間と実態を踏まえた価格請求(作業条件が「指数」の前提と異なる場合は、その旨を丁寧に説明し、実際に要した作業時間を客観的に示して請求する)
- 「見積書・領収書」「作業記録簿」の標準様式の使用(付随する費用も含めて作業内容・価格項目を明らかにする。積算合計からの「総額値引き」は各費用の妥当性・透明性を失わせるおそれに留意)
- 損害賠償における代車費用の支払いに関する考え方の理解(保険金の支払対象となる代車費用は有償での貸与が可能な「わ」「れ」ナンバーに限る。責任割合が0:100でなくても、相当因果関係が認められる代車費用は過失割合に応じた支払対象とされているものが多い)
- 透明性・公平性が疑われないような請求・説明(合理的な理由なく保険金による修理とそれ以外で請求内容に恣意的な差異を設けない。保険会社から透明性に関する指摘を受けた場合は真摯かつ誠実に説明する)
- 損害保険会社との交渉における留意点(見解が相違する場合は双方が丁寧に説明し建設的に対話する。修理側・保険会社側の双方に説明責任がある。「担当拠点に決定権がない」「地域相場で決まっている」「他社にもこの価格でお願いしている」など不合理な説明により交渉が進まない場合は、国交省が設置する窓口に情報提供できる)
- 協定に時間を要する場合の対応(争点や見解の相違が明らかになってから1週間以内に進展が見込めない場合は、依頼者=お客様に状況を説明し、判断を求める)
- 依頼者に対する適切な情報提供(求められた場合は修理の内容・方法等を丁寧に説明する)
- 併せて指針は、事業者同士が相互に連絡を取り合い、工賃単価などを共同で取り決める行為は独占禁止法第3条の不当な取引制限に当たるため行わないことを明記しています(第6章 6-5)。
- 見積書・掲示物等で「当店は国土交通省の価格交渉指針に沿った対応を行います」と自店として表明する(指針上の認定・宣言制度があるわけではないため、自店の姿勢表明として行う)
1-4. 本書の交渉スタンス ― 冷静・専門的・記録主義
- 敵対しない。協定は保険会社との「物差しのすり合わせ」であり、共に「お客様(消費者)への適正な填補」という共通目的に向かう場です。感情的になった時点で交渉は不利になります。保険金はお客様のお金であり、当店のお金ではありません。この自覚が冷静さの土台です。
- 保険会社を一括りに悪と見ない。対応には会社・担当者により差がありますが、良識的なAJも多くいます。個社批判・担当者攻撃は行いません。
- 口頭より書面。電話での「言った言わない」を避け、重要な主張・合意は必ず書面(メール可)で残します。相手の主張も「書面でお願いします」と依頼するのが標準です。
- 根拠で語る。「高い・安い」の水掛け論ではなく、法令・ガイドライン・判例の趣旨・市場データ・自社の算定根拠で説明します(第4章〜第6章)。
- 妥協点を設計する。一切妥協しない交渉は存在しません。譲れる点・譲れない点を事前に整理し、「1つ譲れば1つ譲ってもらう」歩み寄りで着地させます(第2章 ステップ⑧)。実際、適切に準備された協定の大半は通常の協議でスムーズに合意に至ります。エスカレーション(第10章)は例外の中の例外です。
⚠️ 法的事項の取り扱いについて 本書に登場する法令・判例は、交渉の考え方を整理するための参考です。個別の事案は事実関係により結論が異なります。法的判断が必要な場面(訴訟・弁護士介入・支払拒否の長期化等)では、必ず弁護士等の専門家に相談してください。現場スタッフが断定的な法的主張・法的助言を行うことは禁止します。
1-5. 絶対にやってはいけないこと(先に釘を刺します)
- 不正請求は一発アウトです。①免責金額(自己負担分)を値引きで相殺して保険請求だけ満額にする、②実作業と乖離した工数の水増し、③事故と無関係の損傷を事故損害として計上する――いずれも保険金詐欺に問われ得る行為であり、シューリーズ全店の信用を破壊します。発覚した場合は加盟契約上の処分対象です。
- 本書で述べる「工数の裁量」(第5章)は、実作業の実態に基づく正当な工数を自社の責任で計上できるという意味であって、水増しの根拠ではありません。
- お客様に無断で協定金額を決める・変えることも禁止です(第3章 3-4)。
第2章 協定の全体プロセス ― 協定FLOW ①〜⑪
2-1. フロー全体図
【入庫まで】
① 入庫連絡(お客様→当店) → ② 保険会社・AJへ連絡
【準備】
③ 見積書作成&現車準備 → ④ AJへ見積書提示 → ⑤ AJ現車確認の日程調整
【立会】
⑥ AJと一緒に現車確認(まずAJの意見を聞く)
【すり合わせ】
⑦ 見積書修正(一致は確定・不一致は保留) → ⑧ 保留箇所の歩み寄り
【合意】
⑨ 協定スタート金額の算出 → ⑩ 値引き調整(工賃税別分のみ)
→ ⑪ 修理前協定金額の決定・書面化・お客様の合意
2-2. 各ステップの標準動作
① 入庫連絡を受けたら(受付マニュアル第6章から引き継ぎ) - 相手方(加害者側)保険の対物超過修理費用特約の有無を確認する(第7章 7-4) - 車両保険使用の場合は協定保険価額(車両保険金額)と免責金額を確認する - 入庫確認書をお客様と交わす(2-3)
② 保険会社・AJへの連絡 - 事故受付番号・担当AJ名・立会予定を確認 - ①で確認した2点(対物超過特約・協定保険価額)を保険会社側にも再確認 - 協定の進め方の希望を先に伝える:「協定に1週間以上を要する場合はお客様に状況をご説明します。その際は御社に否認根拠等のご説明をお願いすることがあります」(揉める前に、標準の進行ルールとして冷静に宣言しておく)
③ 見積書作成&現車準備(見積の作り方は見積もりマニュアル第8章) - 必ず当店の見積を先に作る。保険会社側の見積を土台にすると、以後の協議がすべて相手の物差しで進む - 損傷箇所へのテープ表示(立会で見落とし・言い漏らしを防ぐ) - バンパー脱着・リフトアップ等、見えない損傷を見せられる状態にしておく(下回りの損傷は展開して初めて確認できる。可視化の準備が協定の精度を決める) - 損害確認シート(第3章)に自店の損害調査結果を記入しておく
④〜⑤ 見積提示と立会日程 - 見積書は立会前にAJへ送付し、AJが検討したうえで立会に来られるようにする - 立会日はお客様にも共有(同席可能なら同席いただくのが理想)
⑥ AJと一緒に現車確認 ―「まずAJの意見を聞く」 - 立会の技術は第3章で詳述します。原則は1つ:こちらから主張をまくし立てず、まずAJの見立て(交換部位・鈑金部位・ボカシ範囲・最終到達部位)を聞く。相手の物差しを把握してから、自店の見立てとの差分だけを議論します。
⑦ 見積書修正 ― 一致と不一致の切り分け - AJが不要とする項目とその根拠を項目ごとに整理する - 双方の見解が一致した箇所は確定(削除も含む) - 不一致の箇所は「保留」として残す。この場で無理に決めない - 「項目」の議論(この作業が必要か)と「金額」の議論(単価・工数が妥当か)を分けて進めると、論点が混ざらず早く着地します。
⑧ 保留箇所の歩み寄り - 保留箇所は「1つ譲ったら1つ譲ってもらう」を基本に、双方が納得できる着地点を探します。 - 譲れる項目(軽微・立証が弱い・金額影響小)と譲れない項目(安全性・品質・修理四原則に関わる)を事前に社内で仕分けしておくこと。修理四原則=性能回復・安全性・耐久性・美観。この4つを損なう妥協はしません。
⑨ 協定スタート金額 - 合意できた項目を積み上げた金額が「協定スタート金額」です。
⑩ 値引き調整 ― 対象は工賃(税別)のみ - 商慣行として最終調整(端数調整等)を求められることがあります。応じる場合も、値引きの対象は工賃の税別分のみ。部品代(実費)は値引き対象外と明言します。 - 消費税の扱い:値引きを行った場合の消費税は、値引き後の金額(課税標準)に税率を乗じて算出します。「税額そのものを値引く」処理はしません(税額は課税標準から機械的に決まるものであり、値引き交渉の対象ではありません)。 - 合理的な理由のない総額値引きは、各費用の妥当性・透明性を失わせるおそれがあるとされています(国交省ガイドライン④⑥)。応じない方針を丁寧に伝えて構いません。 - 各店で設定した値引き上限(設定項目一覧#4)を超える調整は、協定承認者(#3)の決裁を得ること。
⑪ 修理前協定金額の決定 - 承認の順序は「社内決裁(協定承認者。設定項目一覧#3)→ AJとの最終合意 → お客様への説明・合意」。社内決裁を経ていない金額をAJに「確定」として提示しない - 協定金額の社内決裁を得た - 協定金額を立会確認書(第3章 3-3)で即書面化する - お客様に協定金額と修理内容を説明し、合意を得る(これが済むまで「協定成立」ではない。第11章) - 損害額確定前に「修理するかどうか」をお客様に迫らない。「損害額が確定しないと、修理・買替のご判断はできませんので」と順序を守る - 一度成立した協定金額を、後から一方的に減額したいと持ちかけられても応じない。「協定は書面で成立済みです」と立会確認書を根拠に対応し、店長へ報告する
2-3. 入庫時の契約設計 ― 入庫確認書
保険案件は工程が長く関係者が多いため、入庫時にお客様と交わす書面で後日のトラブルを予防します。標準の記載項目:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 委任事項 | 損害額・時価額・評価損額の調査に関する事務をお客様から当店へ委任(※示談交渉の委任ではない) |
| 保険金の入金先 | お客様口座/当店口座のいずれかをお客様が選択(各店標準を設定。お客様口座の場合、修理代金は納車時にお客様から受領) |
| 車内私物 | 貴重品はお持ち帰りいただき、車内私物の紛失・損傷は当店の故意・重過失による場合を除き免責 |
| 交換部品 | 取り外した交換部品の所有権放棄と産業廃棄物処分への同意(処分費は損害の一部として計上できる場合がある) |
| 未成約時の見積費用 | 未修理(他店修理・修理しない)・買替・全損となった場合の見積関連費用。分解診断料/見積書作成料/復元費/保管料に区分し、税込金額・発生時点・請求先を明記(各店設定。区分・基準は見積もりマニュアル第10章 10-3と統一) |
| 代車 | 工場代車の燃料負担・代車で事故を起こした場合の保険(他車運転特約の要確認) |
| 再修理保証 | 納車後一定期間内の無償再修理保証(各店・シューリーズ保証基準に従う) |
未成約時(未修理・他店修理・買替・全損)の見積費用は、分解診断料・見積書作成料・復元費・保管料に区分した実費相当の定額(税込)を入庫確認書の別表に明記しています(見積金額の◯%といった割合連動の方式は用いません)。あわせて発生時点(分解着手時・見積書交付時等)と、保険会社が損害調査費用として支払わない場合の請求先(事前同意済みの場合のみお客様本人)も同じ書面で事前に同意いただきます。分解を伴う損害調査は実費が発生する専門業務であり、無償が当然という前提には立ちません(実際に請求するかは案件ごとに判断)。
2-4. 追加損傷の再協定と精算(協定後の変動対応)
修理過程で協定時に見えていなかった損傷が見つかることは珍しくありません。協定外の作業は支払われない前提で、次の順番を必ず守ります。
- 追加損傷を発見したら:① 作業停止 → ② 写真撮影・原因の整理(事故との因果関係)→ ③ 追加見積の作成 → ④ AJへ再確認(追加協定)→ ⑤ お客様への説明・合意 → ⑥ 再着工。この順番を飛ばして進めない。
- 逆に、実際の修理が協定内容を下回った場合(交換予定が鈑金修正で済んだ等)は、精算見積を実態に合わせて下げ、未実施の作業は請求しません。修理内容・価格の変更は精算見積に反映し、お客様・保険会社の双方に説明します(国交省ガイドライン⑥の透明性の趣旨)。
第3章 現車確認と立会の標準化
3-1. 損害確認シート ― 記号体系の統一
立会前に自店の損害調査結果を損害確認シートに記入します。部位別に次の記号で統一します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| ✓ | 損傷なし |
| × | 要交換 |
| B | 鈑金修理 |
| P | ボカシ塗装 |
| D | 脱着 |
- シートには当店欄とAJ欄を併記し、立会でAJの見立てを隣に書き込めるようにします。双方の差分が一目で分かり、⑦の「一致/保留」の切り分けが速くなります。
- 車両ダイアグラム(外板・下回り・骨格の3面)に損傷位置を図示します。
3-2. 立会の進め方
- 損傷箇所はテープ表示済みの状態で迎える
- 分解が必要な箇所(バンパー裏・下回り)は展開した状態で見せる
- まずAJの意見を聞く:交換部品/鈑金塗装部位/ボカシ範囲/損傷の最終到達部位の4点について、先にAJの見立てを確認する
- 差分が出た箇所だけ、根拠(写真・実測・構造)を添えて議論する
- 立会中に確認した内容はその場で損害確認シートに記入し、AJにも確認印(サイン)をもらう
- 写真は「事故状況と損傷の整合」を示せるように撮る(見積もりマニュアル第4章の撮影標準)。写真・記録は第一義的にはお客様への説明のためのものです。
3-3. 立会確認書 ― 合意は即書面化
立会・協議で金額の合意に至ったら、その場で立会確認書に書面化します。口頭合意のまま日を置くと、担当者交代・社内決裁を理由に合意が動くことがあります。
標準の記載項目: - 日付/車種/登録番号 - 損害範囲の確定の可否(不可の場合「修理過程で損害範囲が拡大する可能性がある」旨を注記) - 確認金額(税別・税込を併記) - AJ確認欄・当店確認欄(双方サイン) - 注記:「本書は損害額の確認であり、修理内容は別途お客様と協議のうえ決定する」
AJがサインを控える場合のフォールバック:会社の方針として書面へのサインを控えるAJもいます。その場で対立せず、協議内容(合意項目・金額・保留項目)をその場でメール送信し、AJから内容確認の返信をもらうことで書面化に代えます。返信が得られない場合も送信記録自体を残し、後日の電話合意も同様に「本日のお電話のとおり◯◯円で確認しました」とメールで追記して返信を得ます。
3-4. 当事者(お客様)の合意が必須
- 立会確認書はAJと当店の「協議結果」ですが、損害額の当事者はお客様です。お客様不在のまま当店と保険会社だけで金額を最終決定することは、お客様の権利を差し置く行為であり法的リスクがあります(弁護士法・消費者保護の観点)。
- 協定金額はお客様に報告し、合意を得てから協定成立とする(説明の仕方は第11章)
3-5. 画像協定(リモート協定)― 立会なしで協定する場合
軽微な損傷や遠隔地のAJ対応などで、現車立会なし(写真・動画ベース)で協定する運用が広がっています。立会協定と同じ品質で合意するための標準手順です(適用基準は設定項目一覧#13)。
- 撮影は見積もりマニュアル第4章の標準セットに加え、損傷の深さ・範囲が伝わる寄り/引きのカットを追加する(画像で伝わらない損傷は画像協定にしない)
- 分解を要する箇所(バンパー裏・下回り)は、分解後の写真を送ってから金額協議に入る(未分解のまま画像だけで協定しない)
- 協議・合意はメールまたはシステム上の記録に残る形で行い、合意金額(税別・税込)と項目をメールで確定する。このメール記録が立会確認書の代替になる。電話で合意した場合も直後に「本日のお電話のとおり◯◯円(税込◯◯円)で確認しました」と送信し、返信を得る
- 画像協定でも、追加損傷の再協定(第2章 2-4)とお客様の合意(3-4)の要件は立会協定と同じ
- 画像では判断できない・見解が割れる案件は、無理に画像で進めず現車立会に切り替えます。
第4章 交渉の理論的根拠 ― 「支払われるべき額」の考え方
協定で意見が割れたとき、拠り所になるのは声の大きさではなく理屈です。この章の内容は、そのまま口に出すためではなく、慌てないための背骨として理解してください。
4-1. 何が「損害」か
| 保険の種類 | 支払われるべき額の考え方 |
|---|---|
| 対物賠償(相手方保険) | 不法行為による損害=事故前後の財産状態の差額(差額説)。修理費はその損害額を算定するための代表的な手段 |
| 車両保険(自分の保険) | 約款上の「損害」=事故直前の状態に復旧するために必要な修理費相当額 |
- 対物賠償では、損害は事故時に発生しているため、未修理のままでも修理費相当額が損害と認められ得ます(差額説の帰結)。
- ただし、「修理・買替の実行有無で計算がまったく変わらない」わけではありません。保険・特約の種類によって扱いが異なります:
- 消費税分・残存物の扱い・買替諸費用は、実際に修理・買替を行ったかどうかが認定に影響し得る項目です(第7章)
- 対物超過修理費用特約は実際に修理することが前提の実費精算型です(第7章 7-4)
- 車両保険は約款で支払方法・要件が定まっており、対物賠償と同じ理屈をそのまま当てはめられません
- お客様に「修理してもしなくても金額は同じです」と一括りに説明しないこと
- 損害の発生時点・場所:対物賠償は不法行為時、車両保険は約款所定の損害発生の地・時が基準です。
4-2. 立証責任と説明責任
- 請求する側(お客様側)に立証責任があります。これは訴訟になっても変わりません。当店の見積書・写真・作業記録・市場データは、お客様の請求を支える立証資料です。「根拠のある請求を積み上げる」ことが交渉のすべての土台です。
- 一方、交渉の場面では保険会社側にも説明責任があります。国交省ガイドライン⑦は「車体整備事業者は必要な修理方法・修理範囲・費用について、損害保険会社は同社の判断する原状復旧に要する費用の説明について、それぞれ説明責任を有する」と整理しています。
- 参考になる裁判例:東京高裁 平成29年12月12日判決(平29(ネ)3437号 損害賠償請求控訴事件・原判決変更)。原典で確認できる判旨の要点:
- レバレートは修理工場ごとに異なる、いわば「希望価格」であり、被害者は(普通に営業している修理業者であれば)どの工場に修理を依頼してもよく、支払った修理代金はそのまま加害者に請求できるのが原則
- 不要な修理が行われた、または修理代金が社会通念に照らし不当に高額であるといえる「特別の事情」が認められる場合はともかく、加害者側は「請求額が自分の相当と考える金額より高額」というだけでは支払いを拒めない
- 本件では、保険会社側の協定実績等を考慮しても、当該工場のレバレートが社会通念上不当に高額とは認めるに足りないと判断された
- 読み方の注意(射程):これは特定の事案(当該工場・当該単価・当該事故)についての判断であり、「どんな単価・工数でも通る」という一般論ではありません。同じ判決の中でも、個々の修理項目・工数は証拠に基づいて厳密に増減されています。「拒む側が立証しない限り支払われる」という立証責任の転換を認めたものと読むのは行き過ぎです。
- 交渉実務での使い方:立証責任の議論を振りかざすのではなく、否認する項目・その理由・算定根拠の「説明」を求めます(上記ガイドライン⑦の説明責任)。同時に、当店の見積・写真・作業記録・算定書で、こちらの立証資料を常に整えておくこと。減額を求められたら次の一言で十分です。
「どの項目がどのような理由で不要とお考えなのか、どの金額がどのような理由で社会通念に照らして不当に高額とお考えなのか、書面でご説明いただけますか。」
- 保険会社には、消費者基本法・監督指針・業界ガイドラインの趣旨から、契約者・被害者への説明責任があります。当店の内部原価資料(仕入伝票・決算書等)の開示要求に応じる義務はありません。価格転嫁の説明は「人件費・物価の上昇を考慮した」という社会通念に照らした範囲で足ります。
4-3. 価格と工数の事業者裁量
- 販売価格(レバレート)と作業時間(工数)の設定権は、サービス提供者である修理事業者にあります(契約自由の原則。国交省ガイドライン②③)。当店の売値を、契約関係のない第三者が決めることはできません。
- ただしこの裁量には責任が伴います。「なぜこの項目で、この単価・この工数なのか」を自分の言葉で説明できること(第5章・第6章の算定根拠)。そして保険修理とそれ以外で価格を変えないこと(国交省ガイドライン⑥)。保険案件だけ単価を吊り上げる運用は、裁量の濫用であり、係争になれば自店の信用を失う最大の要因になります。
4-4. よくある説明と、その受け止め方
| 保険会社側の説明 | 受け止め方・返し方 |
|---|---|
| 「担当(拠点)に決定権がない」 | 国交省ガイドライン⑦の観点では合理的な説明とはいえない。「では決定権のある方から、根拠を書面でご説明いただけますか」 |
| 「地域相場で決まっている」「他社にもこの価格でお願いしている」 | 国交省ガイドライン⑦が挙げる「不合理な説明」の例そのもの。「当店の単価は自社の原価と人件費に基づいています。算定根拠はお示しできます」 |
| 「指数対応単価は◯円と決まっている」 | 指数対応単価は本来、工場ごとに保険会社と取り決める単価であり、保険会社の社内単価が当店のレバレートを拘束するものではない(第5章・第14章用語集) |
| 「実際に修理した経過・伝票の確認が必要」 | 対物賠償では未修理でも修理費相当額が損害となり得る(4-1)。確認要請には可能な範囲で誠実に協力しつつ、支払条件ではないことを整理する |
| 「これ以上は払えません」(根拠なし) | 4-2の書面説明要求へ。応答がなければ第10章の手順 |
※上記はあくまで「典型例と考え方」です。個々のAJ・保険会社を疑ってかかる姿勢ではなく、根拠を確認し合う姿勢で使ってください。
第5章 指数の実態 ― 指数は「参考資料」である
5-1. 指数とは何か
- 指数=自研センター(損害保険会社の出資により設立された調査機関)が作成する標準作業時間の目安。1.0=1時間。業界の大半の協定で事実上の共通言語になっています。
- 重要なのは位置づけです。国交省ガイドライン③は、指数を「標準的な作業時間」の目安と位置づけたうえで、作業条件が指数の前提と異なる場合には、その旨を丁寧に説明し、実際に要した作業時間を客観的に示して価格を請求できるとしています(前提を満たしてもなお実作業時間と著しく乖離する指数は、作成主体または国交省の情報提供窓口へ具体的情報を提供できる、とも明記)。指数の作成主体自身も「指数は参考資料であり、作業方法等を指定・強制するものではない」と説明しています。指数は法令でも契約でもありません。
5-2. 指数の中身 ― 指数≠実作業時間
指数には、正味の作業時間以外の要素が内包されています。分解して理解しておくと、「指数の時間内で終わるはず」という誤解に冷静に対応できます。
《例》分解イメージ:プリウス(ZVW30)リヤゲート交換 指数1.90(1時間54分)の場合 - 指数 = 正味時間 + 準備時間0.33 + 余裕時間(正味時間の30%) - 逆算すると正味時間 ≒ 1.21 - うち2人作業分 0.40 を控除 → 0.81 - 水密テスト 0.3・立付調整 0.1 を控除 → 実質の脱着正味時間 ≒ 0.41(約25分)
つまり指数1.90の内訳の過半は、準備・余裕・複数人作業・付帯検査です。「指数=1人がその時間ずっと手を動かす時間」ではありません。 ※本例は、指数の構成(正味時間・準備時間・余裕率等)の考え方を理解するための社内研修用の試算例です。数値は車種・年式・指数テーブルの版により異なるため、実際の協定でこの分解を用いる場合は、最新の指数テーブル・指数構成資料と自店の実測記録で確認してください。
- この構造は逆方向にも使われます。「実作業はもっと短いはず」という減額論に対しては、準備・余裕・付帯作業が内包されている前提の数値であることを示して整理します。
- 指数が実態と乖離する作業(例:ボカシ塗装がパネル塗装より長くかかる等)は、実測データを添えて自社の実態工数を主張できます。国の実態調査でも、鈑金作業を中心に指数と実作業時間の乖離が指摘されています。
5-3. 工数の裁量と「水増し」の一線
- 実測に基づく工数の計上は正当な裁量です。実態のない工数の上乗せは不正請求です。両者の線は「作業記録・写真・実測で立証できるか」。立証できない工数は計上しない――これが加盟店共通のルールです。
- 指数と異なる工数を計上する場合は、作業記録簿・実測メモを残す
第6章 レバレート(工賃単価)の算定根拠
6-1. なぜ算定根拠が必要か
- レバレートは自社が決めるものですが(第4章 4-3)、協定の場で「なぜその単価か」を説明できる店とできない店では交渉力がまったく違います。決算数値から逆算した算定書を1枚持っておくことが、最強の説明資料です。
- 国交省ガイドライン②は「人件費の上昇を考慮した工賃単価の設定」を明示的に認めています。消費者物価・最低賃金の上昇局面では、価格転嫁は正当な経営行動です。
6-2. 算定の標準ロジック(レバレート算出ツール)
シューリーズ標準の「レバレート算出ツール」は、鈑金塗装部門の損益から必要単価を逆算します。
① 実作業時間 = 年間稼働日数 × 8h × 直接工員数 × 稼働率
② 損益レバレート =(販管費 − 部品・塗装材料・外注の粗利)÷ 実作業時間
……現状の費用構造で損益トントンになる単価
③ 算出レバレート = 損益レバレート × 人件費変動率 ÷(1 − 計画営業利益率)
……人件費上昇と適正利益を織り込んだ、下限として必要な単価
- ※費用範囲の注記:②の「販管費」に鈑金塗装部門の直接労務費(工員人件費)を含めて計算するか、別掲するかで結果が大きく変わります。自店の算定書にどちらの方式かを明記し、毎期同じ基準で計算してください(協定の場で算定根拠を示す際、費用範囲を説明できることが前提です)。
- 総労働時間:260日 × 8h × 直接3人 = 6,240h、稼働率0.68 → 実作業時間 4,243.2h
- 損益レバレート = 7,639.6円/h
- 算出レバレート = 7,639.6 × 人件費変動率(+1.44%) ÷(1 − 計画営業利益率8%)= 8,423円/h この算定書を提示できる状態にしておくことで、「単価の根拠」を問われた際に決算実態と直結した説明ができます。
8,423円/hは算出ツール上の「最低必要単価(下限の根拠値)」であり、実際の請求単価そのものではありません。実請求単価は、算定年度・稼働率の前提・作業の難度やリスク・地域の市場水準を加味して各店が決定します(清田自動車の実請求単価の参考例:国産車10,000円/h・輸入車13,500円/h。見積もりマニュアルの《参考例》と同じ値)。算出ツールの値は「これ未満では損益が成り立たない」ことを示す説明資料として使います。
- 年1回(決算後)にツールで再計算し、単価改定の要否を判断する
- 全国調査(業界団体・第三者機関の単価調査)の平均・分布データを補助資料として保管する(「社会通念上不当に高額」ではないことの傍証になる)
6-3. 塗装材料費の計上
- 塗装材料費も同じ発想で、計画材料利益率を織り込んだ比率で計上します。
- 算出塗装材料比率 = 塗装材料代 ÷ 塗装売上 ÷(1 − 計画材料利益率)
- ※分母の「塗装売上」は塗装工賃売上(材料売上を含まない)を指します。分母の定義を変えると比率の意味が変わるため、異なる定義を用いる店は算定書に定義を明記し、毎期変えないでください。
算出塗装材料比率 = 18.53%(分母=塗装工賃売上、計画材料利益率15%で算定)。塗料価格の高騰局面では毎期見直します。
6-4. 業界の動き(参考)
- 工賃単価を巡っては、日車協連(日本自動車車体整備協同組合連合会)が保険会社側と単価の引き上げ協議を継続しており、近年は大手損保の指数対応単価の引き上げも報じられています。単価是正は業界全体の流れであり、当店だけの特殊な主張ではない――この認識を持って落ち着いて交渉してください。
6-5. 単価は各店が独立に決める(独占禁止法上の注意)
- シューリーズ本部は、加盟店の単価を指定・推奨しません。レバレートは各店が自社の原価・地域事情・品質に基づき独立して設定するものです。
- 加盟店間・同業者間で具体的な単価を調整・申し合わせる行為は、独占禁止法第3条(不当な取引制限)に当たるおそれがあるため行いません。国交省ガイドラインも「事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、工賃単価などを共同で取り決める行為は独占禁止法第3条の不当な取引制限に当たることから行わないこと」と明記しています。
- レバレート算出ツール・全国調査データは、各店が自店の判断で単価を決めるための算定方法・参考資料であり、共通単価を定めるものではありません。
第7章 時価額・全損・評価損・対物超過
修理費が大きい案件では、協定は「修理費」から「車両の価値」の議論に移ります。フロント担当が最低限押さえるべき考え方をまとめます。
7-1. 時価額 ― 中古車市場で買い直せる金額が基準
- 時価額の基準は、最高裁昭和49年4月15日判決(民集28巻3号385頁)の趣旨では「同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を、中古車市場において取得するのに要する価額」です。
- 実務上のポイント: 1. 市場性が優先(実際の中古車流通価格。カーセンサー・グーネット等の同等車データが立証資料になる) 2. 「新車価格の一定割合(例:10%)」で機械的に減額する方式は、上記判例の趣旨(市場での再取得価額を基準とする考え方)に照らして根拠が弱く、市場データを提示して再算定を求めることができる 3. 消費税相当額・買替諸費用は、上記判旨(時価額そのもの)とは別途の損害項目として、下級審裁判例・実務の集積の中で認められてきたもの。時価額と混ぜず、分けて主張・積算する(7-2)
- 中古車価格ガイドブック(いわゆるレッドブック)は実務で広く参照されますが、予測値であり、消費税・買替諸費用を含まず、古い車種はデータ自体がないという限界があります。ガイドブック掲載額と市場実勢が乖離している場合は、実勢データの方を提示します。
- 時価額が争点になったら:同等車の市場データ収集(3件以上)→ 諸費用を積算 → 書面で提示。難航時は第9章(第三者機関の時価額調査報告書)
7-2. 全損 ― 時価額を基本に、消費税・買替諸費用を別途検討する
- 全損には物理的全損(修理不能)と経済的全損(修理費が時価額を超える)があります。
- 経済的全損で買替が相当な場合、お客様が受け取るべき額は「①車両時価額(市場価格)」を基本に、「②消費税相当額」「③相当な範囲の買替諸費用(登録手続費用・車庫証明手続費用・納車費用等)」を別途検討して積算します。②③は昭和49年最判の判旨そのものではなく、下級審裁判例・実務の集積により認められてきた項目であり、費目ごとに認められるか否かが分かれます(自動車税・自賠責保険料等の未経過分、各種代行手数料などは扱いが分かれる。個別の可否は要確認)。「時価+消費税+諸費用が常にセットで満額出る」という説明はせず、①のみの提示で終わっていないか・②③の検討漏れがないか、というチェックリストとして使ってください。
- 全損か分損かの判定は時価額の算定に依存します。時価額の主張(7-1)が先です。
- 全損車両(事故現状車)にも残存価値があります。制度は保険の種類で区別して理解します:
- 対物賠償で時価額全額の賠償を受ける場合 → 民法422条(損害賠償による代位)の問題
- 車両保険で保険金全額の支払いを受ける場合 → 保険法24条(残存物代位)と約款の問題
- お客様が残存車両を手元に残したい場合は、残存物の価値の控除や所有権の移転の扱いを、保険会社・専門家と個別に確認したうえで進めます(店長判断案件)。
7-3. 評価損(格落ち)
- 評価損=修復歴が付くこと等により市場価値が下がった分の損害。対物賠償では請求し得る項目ですが、保険会社側から積極的に案内されることは少ないため、該当しそうな案件ではお客様に情報として伝えるのが加盟店の務めです(判断・請求はお客様)。
- 実務でよく使われる目安(初度登録3年以内・修理費の2〜3割等)はあくまで慣行であり、実際の市場では年式が経過した車でも修復歴の有無で価格差が生じます。主張する場合は「事故歴あり/なしの同等車の実勢価格差」を市場データで立証するのが王道です。
- 車両保険には評価損の概念がない(約款上の支払対象でない)ことに注意。対物賠償での論点です。
7-4. 対物超過修理費用特約
- 修理費が時価額を超える場合に、時価額との差額を一定額(多くは50万円)まで支払う特約。多くの任意保険に付帯されています。
- 運用上の注意:
- 受付段階で特約の有無を確認する(第2章 ステップ①)
- 特約の使用は契約者(加害者)本人の意思確認が前提。保険会社が「使用了承済み」と伝えてきた場合は、着工前に「修理着工前確認書」で書面確認を取り、返送してもらう(後日の「言った・言わない」を防ぐ)
- 特約は実際に修理することが前提(実費精算型)。また約款上、事故後一定期間内(例:6ヶ月以内)の着工が条件とされることが多い。約款条件を必ず確認する
- 特約の使用を交渉材料に値引きを迫られた場合は、その場で応じず店長へ(特約と修理費の適正額は別の論点です)
第8章 代車費用と期間の相当性
8-1. 基本の考え方
- 大前提:保険会社へ代車費用を請求できるのは、有償の貸渡契約により現実に費用が発生する場合のみです。国交省ガイドライン⑤も、保険金支払いの対象となる代車費用を「有償での貸与が可能な『わ』『れ』ナンバー(レンタカー許可車両)に限る」としています。無償の工場代車を貸し出した場合、代車費用の保険請求はしません(発生していない費用の請求は不正請求になります)。
- 使い分け:無料の工場代車=自費修理・業者案件等でのサービス(案内・貸出手順は受付マニュアル第7章)。保険で代車費用を請求する案件=有償のレンタカー貸渡契約(わ/れナンバー)で契約書・料金表を整えて貸し出す。自店の有償/無償の別とレンタカー許可の有無は設定項目一覧#7-2に明記。
- 代車費用は事故と相当因果関係のある損害として認められ得ます。ただし必要性・相当性の立証が求められる項目です(漫然と長期間貸し出せば認められるものではありません)。
- 過失割合がある事案でも、割合に応じた按分請求が可能です(民法722条の過失相殺の考え方。「双方に過失があるから代車費用は一切出ない」という整理は正確ではありません)。国交省ガイドライン⑤もこの考え方を示しています。
- 期間の考え方(参考裁判例とされるもの:東京地裁平成14年10月15日判決(参考・要原典確認)の趣旨):代車使用の相当期間は実修理期間だけでなく、見積・協定交渉に必要な期間も含み得るとされています。協定が長引いた期間を機械的に除外する整理には、この趣旨を示して協議します。
- 全損時の目安:中古車買替で2週間程度・新車買替で3週間程度+協定に要した期間、という整理が実務の出発点です。部品調達の長期化(輸入車等)など、目安を超える事情は個別に立証します。
8-2. 代車期間内訳書 ― 期間を「工程」で説明する
期間の相当性は、感覚ではなく工程の内訳で説明します。標準様式「代車期間内訳書」の項目:
入庫日 → 代車貸出日 → 立会日 → 協定日 →(お客様の検討期間)→ 部品発注
→ 部品入荷 → 鈑金着工〜終了 → 塗装待ち → 塗装着工〜終了 → 仕上げ・検査
→ 納車連絡 → 納車日 → 代車返却日
- 貸出期間が長期化した案件は、内訳書を作成して「どの工程に何日かかったか」を書面で示す
- 協定成立前に着工できない事情(金額未確定)で待機した期間は、その旨を明記する
8-3. 日額・車格
- 日額は市場価格(レンタカー各社の同クラス実勢料金)が物差しです。市場水準の範囲内であれば、一方的な日額の切り下げには市場データを添えて協議します。
- 貸出車格は被害車両との対応(同クラス)が原則。各店の日額・ランク表(設定項目一覧#7)に従います。
第9章 外部第三者機関(DAA)の活用
9-1. DAAとは
- DAA=一般社団法人 事故車損害調査協会。修理事業者でも保険会社でもない第三者の立場で、事故車の損害調査を行う機関です。3次元計測器によるフレーム計測等の設備を持ち、写真ベースの調査にも対応しています。
- 発行される主な書面:
| 書面 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 損害調査報告書 | 損傷範囲・修理方法・修理費相当額の第三者調査 | 修理費の協定が難航したとき |
| 時価額調査報告書 | 実勢市場価格+購入諸費用ベースの時価額算定 | 全損・時価額の提示に乖離があるとき |
| 評価損調査報告書 | 修復歴による市場価値下落の調査 | 評価損の立証が必要なとき |
| 意見書 | 係争中の論点への第三者意見 | 弁護士案件・訴訟段階(専門家と連携) |
9-2. いつ・どう使うか
- 位置づけ:社内の資料(見積・写真・市場データ)で協議を尽くしても平行線のときの、客観性の補強手段です。最初から持ち出すものではありません。
- 依頼判断の目安(各店の基準は設定項目一覧#8):
- 双方の主張額の開きが大きく(目安:数十万円以上)、社内資料では動かない
- 時価額・評価損など、当店の見積だけでは立証しにくい論点
- お客様が弁護士に依頼した/しようとしている案件の資料固め
- 費用感:報告書の種類により数万円程度(時価額調査報告書は33,000円(税込)程度の水準の例あり。料金は改定されるため、依頼時に必ずDAAへ確認)。お客様の弁護士費用特約の対象になる場合がありますが、対象可否は契約内容・保険会社により異なるため、依頼前に必ず保険会社へ確認します。費用負担とメリット(増額見込み)をお客様に説明し、お客様の判断で依頼していただくのが原則です。
- 第三者機関の報告書は「当事者(支払う側・請求する側)が作った資料ではない」という一点で説得力が違います。実際に、第三者調査の提出を機に認定額が見直された事例が多数報告されています。
第10章 協定が難航したときの対応(エスカレーション)
ほとんどの協定は第2章のフローで合意に至ります。本章は例外対応です。段階を飛ばさず、必ず下から順に踏んでください。各段階とも、判断はエスカレーション責任者(設定項目一覧#9)が行います。
10-1. 段階0:記録の整備(常時)
- 協議の経過(日付・相手・内容)を案件メモに残す
- 重要な主張・回答は書面(メール可)でもらう。「お電話の内容を、書面でもいただけますか」
- 録音は、相手に告げたうえで行うのが原則です(無断録音を交渉の道具にしない。記録に残る誠実な対応が本書の記録主義です)。
10-2. 段階1:算定根拠の書面説明要求
- 減額・否認の根拠(不要項目の特定と理由/不当に高額とする客観的根拠)を書面で求めます(第4章 4-2)。
- 併せて、協定が1週間を超えている場合はお客様に状況を説明し、以後の進め方(待つ・妥協する・次の手段に進む)の判断を仰ぎます(国交省ガイドライン⑧。判断の主体はお客様です)。
10-3. 段階2:国土交通省の情報提供窓口
- 書面説明の要求に対し、合理的な説明がないまま協議が止まった場合、国交省ガイドライン⑦に基づき、国交省の情報提供窓口(地方運輸局経由で案内)に事実関係を情報提供できます。
- 留意点:この窓口は個別案件の調停・裁定は行いません。施策検討の参考情報として扱われます。「通報すれば解決する」手段ではなく、「業界の実態を行政に正しく届ける」手段と理解してください。従って相手への圧力として口にするのではなく、淡々と事実を提供します。
10-4. 段階3:金融庁への情報提供・中立的窓口の案内(最終手段)
- 発動基準:お客様が保険金請求に必要な書類を提出してから、約款所定の支払期限を超えても支払いがなく、かつ遅延理由の十分な説明もない場合。
- 「30日」という数字は法令の条文ではなく、多くの自動車保険約款が置く支払期限の目安です(追加の確認・調査を要する場合の延長条項も約款にあります)。保険法21条(保険法の趣旨)は保険給付の履行期の考え方を定めており、その趣旨に照らして問題があり得る状態かどうか、当該契約の約款を確認したうえで判断します。
- 参考裁判例:最高裁平成9年3月25日判決(平5(オ)1858号・火災保険の事案)は、「手続をした日から30日以内に支払う」との約款条項を保険金支払の履行期の定めと解し、保険会社が期間内に必要な調査を終えられなかったとしても、保険契約者側が調査を妨害した等の特段の事情がない限り、期間経過後は支払遅滞の責任を負うとしました。自動車保険そのものの事案ではありませんが、「調査中」を理由に支払期限が際限なく延びるわけではない、という考え方の裏付けになります。
- これはお客様の権利に関わる最終手段であり、当店が主導するものではありません。お客様に状況と選択肢(金融庁の相談窓口・そんぽADR・交通事故紛争処理センター等の中立的窓口・弁護士相談)を情報として案内し、お客様の判断で行っていただきます。弁護士費用特約の有無の確認もこの段階で必ず行います。
- ADR等の位置づけ:そんぽADR・交通事故紛争処理センター等はお客様本人が利用する窓口です。当店が予約・申立て・主張の代行をすることはできません(弁護士法上の制約。第1章 1-2と同じ線引き)。当店の関与は、見積・写真・作業記録など資料の提供までです。
- 直接請求権の注記:被害者が保険会社へ直接請求できる「直接請求権」のうち、自賠責保険(自賠法16条)の被害者請求は人身損害が中心です。物損(対物賠償)については、任意保険約款上の直接請求の制度の有無・要件によるため、必要な場面では協定先の保険会社の制度を確認し、弁護士等の専門家へ橋渡しします(当店が制度の利用可否を断定しない)。
- 乱用禁止:交渉を有利にする脅し文句として「金融庁に言いますよ」を使うことは禁止です。信頼を失い、以後すべての協定が難しくなります。
10-5. 使用しない・原則封印の手段
次の2つは、過去に業界内で用いられた例がありますが、加盟店の標準対応としては原則使用しません。関係悪化のコストが大きく、実効性も限定的です。
- 特定AJの立会拒否通知:担当者個人を名指しで拒否する通知。人ではなく論点で交渉するのが本書の立場です。担当者の対応に重大な問題がある場合は、拒否ではなく保険会社の窓口に担当変更を相談します。
- 弁護士への懲戒請求:相手方弁護士の対応に問題があると感じても、懲戒請求は法的要件の判断を伴う重い手段です。必要性を感じる事案は、必ず自店側の弁護士に相談し、専門家の判断に委ねます。
第11章 お客様への説明 ― 協定はお客様の権利
11-1. 協定の主役はお客様
- 損害額の請求権はお客様のものです。協定は「当店と保険会社のあいだの業界手続き」ではなく、お客様の財産の回復額を決める協議です。この認識をお客様と共有することが、結果的に協定を最も強くします。
- お客様には次の権利があります(消費者基本法の趣旨): 1. 知る権利:修理着工前に、支払われる金額を知る 2. 選択する権利:確定した金額の範囲で、どんな修理をするか(あるいは修理しないか)を選ぶ 3. 説明を受ける権利:保険会社・当店の双方から、分かりやすい説明を受ける
11-2. 節目ごとの説明(受付マニュアル第6章 6-4 と接続)
- 立会前:協定の流れ・想定期間(目安1週間)・長引く場合は都度報告することを伝える
- 協定金額の合意前:金額・修理内容・免責(自己負担)額を説明し、合意を得る。「保険会社さんとの協議で、損害額は◯◯円(税込)でまとまりそうです。この金額・この修理内容で進めてよろしいですか?」
- 免責がある契約:自己負担額を明確に伝える。免責分を値引きで相殺する処理は禁止(第1章 1-5)
- 難航時:1週間を超えたら状況報告(第10章 10-2)。「待つ/妥協する/次の手段」の判断はお客様に委ねる
- 納車時:最終金額・保証内容を書面で渡す
11-3. 説明のトーン
- 保険会社批判をお客様に語らない。「保険会社がひどい」ではなく「協議に時間がかかっています。理由は◯◯です。根拠を揃えて話し合っています」と事実で説明します。
- 断定的な法律アドバイス(「絶対に取れます」「訴えれば勝てます」)は禁止。弁護士判断が必要な局面では「弁護士費用特約が使えるかもしれません。保険証券をご確認のうえ、専門家への相談をおすすめします」と橋渡しに徹します。
- お客様との会話も録音・メモされ得る前提で、誰に聞かれても恥ずかしくない説明をします。
第12章 やってはいけないこと(NG集)
| # | NG行為 | なぜダメか |
|---|---|---|
| 1 | 免責金額を値引きで相殺し、保険請求だけ満額にする | 実質的な水増し請求。保険金詐欺に問われ得る |
| 2 | 実作業と乖離した工数の上乗せ・架空項目の計上 | 不正請求。立証できない工数は計上しない(第5章 5-3) |
| 3 | 事故と無関係の損傷を事故損害として計上する | 不正請求。既存損傷は受付時に区別して記録(受付マニュアル第4章) |
| 4 | 協定成立(金額確定)前の着工・納車 | 交渉材料を失い、未払いトラブルの典型パターンになる |
| 5 | お客様不在で協定金額を最終決定する | 損害額の当事者はお客様。法的リスク(第3章 3-4) |
| 6 | 口頭合意のまま書面化しない | 担当者交代・後日の減額要請に対抗できない(第3章 3-3) |
| 7 | 保険案件だけレバレートを吊り上げる | 恣意的価格差の禁止(国交省ガイドライン⑥)。係争時に致命傷 |
| 8 | 示談交渉・過失割合交渉の代理 | 弁護士法上の制約。当店は技術説明まで(第1章 1-2) |
| 9 | 「金融庁に通報するぞ」等を交渉の脅しに使う | エスカレーションは手順と発動基準に従う(第10章) |
| 10 | 特定の保険会社・担当者の批判をお客様やSNSで発信する | 加盟店全体の信用問題。論点で交渉し、人を攻撃しない |
| 11 | 電話口で等級・支払可否・過失割合を断定する | 保険会社・代理店の領分(受付マニュアル第6章 6-3) |
| 12 | 相見積・他店見積の批判 | 品質と根拠で選ばれる。他店を下げて取る案件は続かない |
第13章 協定チェックリスト(案件ごとに使う)
入庫〜立会前
- 対物超過特約の有無を確認した(相手方保険)
- 協定保険価額・免責金額を確認した(車両保険)
- 入庫確認書を交わした(委任・入金先・未成約時費用・保証)
- 自店見積を先に作成し、AJへ事前送付した
- 損傷部テープ表示・必要箇所の分解展開・写真標準セット完了
- 損害確認シート(当店欄)を記入した
立会〜協定
- 立会では先にAJの見立てを聞いた(交換/鈑金/ボカシ/最終到達部位)
- 一致箇所と保留箇所を切り分けた
- 保留箇所の譲れる/譲れないを社内で仕分けた(修理四原則を損なわない)
- 値引きは工賃税別分のみ・部品代は対象外とした(消費税は値引き後の課税標準で再計算)
- 協定金額の社内承認(承認者決裁)を得た(AJとの最終合意の前)
- 協定金額を立会確認書で書面化し、双方サインした(サインが得られない場合・画像協定の場合はメール記録で代替)
- お客様に金額・修理内容・免責額を説明し、合意を得た
着工〜納車
- 協定成立を確認してから着工した
- 対物超過使用案件は着工前確認書を回収した
- 追加損傷発見時は作業停止→写真→追加見積→AJ再確認→お客様合意→再着工の順を守った(第2章 2-4)
- 実修理が協定内容を下回った場合、精算見積を実態に合わせて下げ、未実施の作業は請求しなかった(第2章 2-4)
- 代車期間が長引く案件は代車期間内訳書を作成した
- 納車時に最終金額・保証を書面で渡した
難航時
- 減額根拠の書面説明を要求した
- 1週間超過でお客様へ状況報告し、判断を仰いだ
- 第三者機関活用・エスカレーションは責任者の判断を経た
第14章 用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| AJ(アジャスター) | 保険会社の損害調査員。技術アジャスターは損傷の調査・立会・協定を担当する。修理の「買い手」ではなく、損害調査への協力を仰ぐ立場 |
| 協定 | 損害額(修理費相当額)について、修理事業者とAJが協議して合意すること。当事者(お客様)の合意があって完結する |
| 指数 | 自研センターが作成する標準作業時間の目安(1.0=1h)。準備・余裕・複数人作業・付帯検査を内包する。法的拘束力のない参考資料であり、作業条件が前提と異なる場合は実際に要した作業時間を客観的に示して請求できる(国交省ガイドライン③) |
| 指数対応単価 | 指数1.0あたりの工賃単価。本来は工場ごとに保険会社と取り決める工賃単価であり、保険会社が社内で一律に定めた単価が当店のレバレートを拘束するものではない |
| レバレート | 工賃の時間単価。自社の費用構造・人件費・計画利益から事業者自身が算定・設定する(第6章) |
| 損益レバレート/算出レバレート | 損益トントンになる単価/人件費変動と計画利益率を織り込んだ設定単価(レバレート算出ツール) |
| 修理四原則 | 性能回復・安全性・耐久性・美観。妥協してはならない品質の下限 |
| 時価額 | 同等車を中古車市場で取得するのに要する価額(最判昭和49年4月15日・民集28巻3号385頁の趣旨)。消費税・買替諸費用は判旨そのものではなく別途の損害項目として分けて検討する(第7章 7-1) |
| 全損 | 物理的全損(修理不能)/経済的全損(修理費>時価額)。経済的全損で買替が相当な場合は、時価額に加えて消費税相当額・相当な買替諸費用を別途検討する(費目ごとに可否が分かれる。第7章 7-2) |
| 評価損(格落ち) | 修復歴等により市場価値が下落した分の損害。対物賠償で請求し得る(車両保険は対象外) |
| 対物超過修理費用特約 | 修理費が時価額を超える場合の差額を一定額まで支払う特約。実修理・期限等の約款条件と契約者本人の意思確認が前提 |
| 免責金額 | 車両保険の自己負担額。値引きでの相殺は禁止 |
| 立会 | AJが現車を確認し、当店と損傷範囲・修理方法をすり合わせる場(第3章) |
| 立会確認書 | 立会・協議で合意した金額をその場で書面化する様式。AJのサインが得られない場合はメール記録で代替する(第3章 3-3) |
| 画像協定(リモート協定) | 現車立会なしに写真・動画とメール等の記録で行う協定。合意金額のメール記録が立会確認書の代替になる(第3章 3-5) |
| 損害確認シート | 部位別の損害調査記録。記号は ✓(損傷なし)×(交換)B(鈑金)P(ボカシ)D(脱着) |
| 入庫確認書 | 入庫時にお客様と交わす書面。調査の委任・入金先・未成約時費用・保証等を定める |
| レッドブック | 中古車価格ガイドブックの通称。予測値で消費税・諸費用を含まない等の限界があり、市場実勢データで補正して用いる |
| 差額説 | 損害=事故前後の財産状態の差額とする損害賠償の考え方。対物賠償では未修理でも修理費相当額が損害となり得るが、消費税・買替諸費用・特約の扱いは実修理/買替の有無が影響する(第4章 4-1) |
| 弁護士費用特約 | お客様の保険に付帯される、弁護士費用等をカバーする特約。第三者機関の調査費用が対象になる場合もある。難航案件では必ず有無を確認 |
| DAA | 一般社団法人 事故車損害調査協会。第三者の立場で損害調査・時価額調査・評価損調査の報告書を発行する機関(第9章) |
| 国交省ガイドライン | 「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」(令和7年3月4日・国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課)。規制的性質を持たない行政指針であり、本書の重要な参考基準(第1章 1-3) |
| そんぽADR/交通事故紛争処理センター | 裁判によらない中立的な紛争解決・相談窓口。お客様に情報として案内する選択肢のひとつ |
本マニュアルはシューリーズ本部の承認のもと改訂されます。現場での気づき・協定事例(うまくいった型/難航した型)は本部へフィードバックしてください。次版に反映します。