シューリーズ加盟店共通マニュアル

シューリーズ加盟店共通 保険協定マニュアル

対象読者
加盟店の見積・フロント担当者(保険案件の協定交渉を担当する人。新人含む)
初版(章・節単位で差し替え可能な構成)
管理
シューリーズ本部(改訂は本部承認のうえ全店へ配布)

0. このマニュアルの使い方

各店で設定・調整する項目一覧(導入時に必ず埋める)

# 項目 自店の設定値(記入欄) 備考
1 レバレート(国産車/輸入車、指数協定用・時間協定用) __ 円/h / ____ 円/h 第6章。算定根拠資料も併せて整備
2 塗装材料の計上方式(材料比率 or 明細積算)と係数 ______ 第6章 6-3
3 協定の社内承認者(協定金額の最終決裁者) ______ 第2章 ステップ⑪
4 値引き上限の考え方(工賃税別分のみ・上限%等) ______ 第2章 ステップ⑩
5 未成約時(未修理・他店流出・買替・全損)の見積費用(区分別の税込定額) 有 ・ 無 / ______ 第2章 2-3。入庫確認書に明記。区分・基準は見積もりマニュアル第10章 10-3と統一
6 入庫確認書・立会確認書・損害確認シートの様式 ______ 第2章・第3章
7 代車・レンタカーの日額と車格ランク表 ______ 第8章
7-2 代車の有償/無償の別レンタカー許可(わ/れナンバー)の有無・保有台数 ______ 第8章 8-1。無償の工場代車は保険請求しない
8 第三者機関(DAA等)への調査依頼の判断基準・窓口担当 ______ 第9章
9 協定難航時のエスカレーション責任者(店長/代表) ______ 第10章
10 保険金の入金先の標準(お客様口座/当店口座)と説明手順 ______ 第2章 2-3・第11章
11 協定記録の保存先(書面・録音・メールの保管ルール) ______ 第10章 10-1
12 対物超過特約使用時の着工前確認書の運用 ______ 第7章 7-4
13 画像協定(リモート協定)の適用基準(対象とする損傷の範囲) ______ 第3章 3-5

第1章 協定とは何か ― 基本の考え方

1-1. 協定の定義

1-2. 契約関係の整理 ― 誰と誰の契約か

協定交渉の出発点は、登場人物の契約関係を正しく理解することです。

関係 契約の種類 内容
お客様 ⇄ 当店 修理契約 当店はお客様から修理を請け負い、お客様に修理代金を請求する
お客様(被害者) ⇄ 加害者・保険会社 損害賠償/保険契約 損害額の請求権はお客様のもの
当店 ⇄ 保険会社 契約関係なし 当店は保険会社の下請けではない。AJの損害調査に「協力する」立場

1-3. 行政指針 ― 国土交通省ガイドライン

令和7年3月4日に国土交通省(物流・自動車局 自動車整備課)が公表した「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」(以下「国交省ガイドライン」)は、本書全体の重要な参考基準(行政指針)です。指針自身が「規制的性質を有するものではない」と明記しているため法令のような強制力はありませんが、行政が示した価格交渉の物差しとして、「車体整備事業者が取り組むべき事項」の9項目(①〜⑨は原文の(1)〜(9)に対応)を常に手元に置いてください。

  1. 自社の責任と考えによる見積の作成(見積を保険会社に委ねるのではなく、自社の責任と考えに基づき提示できるようにする)
  2. 消費者物価指数のみならず人件費等の上昇も考慮した工賃単価の提案(自社の費用構造を分析し、人件費・電気代・材料費等の上昇率を考慮して工賃単価を設定する)
  3. 標準的な作業時間と実態を踏まえた価格請求(作業条件が「指数」の前提と異なる場合は、その旨を丁寧に説明し、実際に要した作業時間を客観的に示して請求する)
  4. 「見積書・領収書」「作業記録簿」の標準様式の使用(付随する費用も含めて作業内容・価格項目を明らかにする。積算合計からの「総額値引き」は各費用の妥当性・透明性を失わせるおそれに留意)
  5. 損害賠償における代車費用の支払いに関する考え方の理解(保険金の支払対象となる代車費用は有償での貸与が可能な「わ」「れ」ナンバーに限る。責任割合が0:100でなくても、相当因果関係が認められる代車費用は過失割合に応じた支払対象とされているものが多い)
  6. 透明性・公平性が疑われないような請求・説明(合理的な理由なく保険金による修理とそれ以外で請求内容に恣意的な差異を設けない。保険会社から透明性に関する指摘を受けた場合は真摯かつ誠実に説明する)
  7. 損害保険会社との交渉における留意点(見解が相違する場合は双方が丁寧に説明し建設的に対話する。修理側・保険会社側の双方に説明責任がある。「担当拠点に決定権がない」「地域相場で決まっている」「他社にもこの価格でお願いしている」など不合理な説明により交渉が進まない場合は、国交省が設置する窓口に情報提供できる)
  8. 協定に時間を要する場合の対応(争点や見解の相違が明らかになってから1週間以内に進展が見込めない場合は、依頼者=お客様に状況を説明し、判断を求める)
  9. 依頼者に対する適切な情報提供(求められた場合は修理の内容・方法等を丁寧に説明する)

1-4. 本書の交渉スタンス ― 冷静・専門的・記録主義

⚠️ 法的事項の取り扱いについて 本書に登場する法令・判例は、交渉の考え方を整理するための参考です。個別の事案は事実関係により結論が異なります。法的判断が必要な場面(訴訟・弁護士介入・支払拒否の長期化等)では、必ず弁護士等の専門家に相談してください。現場スタッフが断定的な法的主張・法的助言を行うことは禁止します。

1-5. 絶対にやってはいけないこと(先に釘を刺します)


第2章 協定の全体プロセス ― 協定FLOW ①〜⑪

2-1. フロー全体図

【入庫まで】
① 入庫連絡(お客様→当店) → ② 保険会社・AJへ連絡
【準備】
③ 見積書作成&現車準備 → ④ AJへ見積書提示 → ⑤ AJ現車確認の日程調整
【立会】
⑥ AJと一緒に現車確認(まずAJの意見を聞く)
【すり合わせ】
⑦ 見積書修正(一致は確定・不一致は保留) → ⑧ 保留箇所の歩み寄り
【合意】
⑨ 協定スタート金額の算出 → ⑩ 値引き調整(工賃税別分のみ)
→ ⑪ 修理前協定金額の決定・書面化・お客様の合意
画像挿入予定
協定FLOW①〜⑪の全体図(1枚もの掲示用)

2-2. 各ステップの標準動作

① 入庫連絡を受けたら(受付マニュアル第6章から引き継ぎ) - 相手方(加害者側)保険の対物超過修理費用特約の有無を確認する(第7章 7-4) - 車両保険使用の場合は協定保険価額(車両保険金額)と免責金額を確認する - 入庫確認書をお客様と交わす(2-3)

② 保険会社・AJへの連絡 - 事故受付番号・担当AJ名・立会予定を確認 - ①で確認した2点(対物超過特約・協定保険価額)を保険会社側にも再確認 - 協定の進め方の希望を先に伝える:「協定に1週間以上を要する場合はお客様に状況をご説明します。その際は御社に否認根拠等のご説明をお願いすることがあります」(揉める前に、標準の進行ルールとして冷静に宣言しておく)

③ 見積書作成&現車準備(見積の作り方は見積もりマニュアル第8章) - 必ず当店の見積を先に作る。保険会社側の見積を土台にすると、以後の協議がすべて相手の物差しで進む - 損傷箇所へのテープ表示(立会で見落とし・言い漏らしを防ぐ) - バンパー脱着・リフトアップ等、見えない損傷を見せられる状態にしておく(下回りの損傷は展開して初めて確認できる。可視化の準備が協定の精度を決める) - 損害確認シート(第3章)に自店の損害調査結果を記入しておく

④〜⑤ 見積提示と立会日程 - 見積書は立会前にAJへ送付し、AJが検討したうえで立会に来られるようにする - 立会日はお客様にも共有(同席可能なら同席いただくのが理想)

⑥ AJと一緒に現車確認 ―「まずAJの意見を聞く」 - 立会の技術は第3章で詳述します。原則は1つ:こちらから主張をまくし立てず、まずAJの見立て(交換部位・鈑金部位・ボカシ範囲・最終到達部位)を聞く。相手の物差しを把握してから、自店の見立てとの差分だけを議論します。

⑦ 見積書修正 ― 一致と不一致の切り分け - AJが不要とする項目とその根拠を項目ごとに整理する - 双方の見解が一致した箇所は確定(削除も含む) - 不一致の箇所は「保留」として残す。この場で無理に決めない - 「項目」の議論(この作業が必要か)と「金額」の議論(単価・工数が妥当か)を分けて進めると、論点が混ざらず早く着地します。

⑧ 保留箇所の歩み寄り - 保留箇所は「1つ譲ったら1つ譲ってもらう」を基本に、双方が納得できる着地点を探します。 - 譲れる項目(軽微・立証が弱い・金額影響小)と譲れない項目(安全性・品質・修理四原則に関わる)を事前に社内で仕分けしておくこと。修理四原則=性能回復・安全性・耐久性・美観。この4つを損なう妥協はしません。

⑨ 協定スタート金額 - 合意できた項目を積み上げた金額が「協定スタート金額」です。

⑩ 値引き調整 ― 対象は工賃(税別)のみ - 商慣行として最終調整(端数調整等)を求められることがあります。応じる場合も、値引きの対象は工賃の税別分のみ部品代(実費)は値引き対象外と明言します。 - 消費税の扱い:値引きを行った場合の消費税は、値引き後の金額(課税標準)に税率を乗じて算出します。「税額そのものを値引く」処理はしません(税額は課税標準から機械的に決まるものであり、値引き交渉の対象ではありません)。 - 合理的な理由のない総額値引きは、各費用の妥当性・透明性を失わせるおそれがあるとされています(国交省ガイドライン④⑥)。応じない方針を丁寧に伝えて構いません。 - 各店で設定した値引き上限(設定項目一覧#4)を超える調整は、協定承認者(#3)の決裁を得ること。

⑪ 修理前協定金額の決定 - 承認の順序は「社内決裁(協定承認者。設定項目一覧#3)→ AJとの最終合意 → お客様への説明・合意」。社内決裁を経ていない金額をAJに「確定」として提示しない - 協定金額の社内決裁を得た - 協定金額を立会確認書(第3章 3-3)で即書面化する - お客様に協定金額と修理内容を説明し、合意を得る(これが済むまで「協定成立」ではない。第11章) - 損害額確定前に「修理するかどうか」をお客様に迫らない。「損害額が確定しないと、修理・買替のご判断はできませんので」と順序を守る - 一度成立した協定金額を、後から一方的に減額したいと持ちかけられても応じない。「協定は書面で成立済みです」と立会確認書を根拠に対応し、店長へ報告する

2-3. 入庫時の契約設計 ― 入庫確認書

保険案件は工程が長く関係者が多いため、入庫時にお客様と交わす書面で後日のトラブルを予防します。標準の記載項目:

項目 内容
委任事項 損害額・時価額・評価損額の調査に関する事務をお客様から当店へ委任(※示談交渉の委任ではない)
保険金の入金先 お客様口座/当店口座のいずれかをお客様が選択(各店標準を設定。お客様口座の場合、修理代金は納車時にお客様から受領)
車内私物 貴重品はお持ち帰りいただき、車内私物の紛失・損傷は当店の故意・重過失による場合を除き免責
交換部品 取り外した交換部品の所有権放棄と産業廃棄物処分への同意(処分費は損害の一部として計上できる場合がある)
未成約時の見積費用 未修理(他店修理・修理しない)・買替・全損となった場合の見積関連費用。分解診断料/見積書作成料/復元費/保管料に区分し、税込金額・発生時点・請求先を明記(各店設定。区分・基準は見積もりマニュアル第10章 10-3と統一)
代車 工場代車の燃料負担・代車で事故を起こした場合の保険(他車運転特約の要確認)
再修理保証 納車後一定期間内の無償再修理保証(各店・シューリーズ保証基準に従う)
《参考例:清田自動車》

未成約時(未修理・他店修理・買替・全損)の見積費用は、分解診断料・見積書作成料・復元費・保管料に区分した実費相当の定額(税込)を入庫確認書の別表に明記しています(見積金額の◯%といった割合連動の方式は用いません)。あわせて発生時点(分解着手時・見積書交付時等)と、保険会社が損害調査費用として支払わない場合の請求先(事前同意済みの場合のみお客様本人)も同じ書面で事前に同意いただきます。分解を伴う損害調査は実費が発生する専門業務であり、無償が当然という前提には立ちません(実際に請求するかは案件ごとに判断)。

画像挿入予定
入庫確認書(標準様式)の記入例

2-4. 追加損傷の再協定と精算(協定後の変動対応)

修理過程で協定時に見えていなかった損傷が見つかることは珍しくありません。協定外の作業は支払われない前提で、次の順番を必ず守ります。


第3章 現車確認と立会の標準化

3-1. 損害確認シート ― 記号体系の統一

立会前に自店の損害調査結果を損害確認シートに記入します。部位別に次の記号で統一します。

記号 意味
損傷なし
× 要交換
B 鈑金修理
P ボカシ塗装
D 脱着
画像挿入予定
損害確認シートの記入例(当店欄・AJ欄の対比)

3-2. 立会の進め方

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立会の様子(テープ表示・指差し確認)

3-3. 立会確認書 ― 合意は即書面化

立会・協議で金額の合意に至ったら、その場で立会確認書に書面化します。口頭合意のまま日を置くと、担当者交代・社内決裁を理由に合意が動くことがあります。

標準の記載項目: - 日付/車種/登録番号 - 損害範囲の確定の可否(不可の場合「修理過程で損害範囲が拡大する可能性がある」旨を注記) - 確認金額(税別・税込を併記) - AJ確認欄・当店確認欄(双方サイン) - 注記:「本書は損害額の確認であり、修理内容は別途お客様と協議のうえ決定する」

AJがサインを控える場合のフォールバック:会社の方針として書面へのサインを控えるAJもいます。その場で対立せず、協議内容(合意項目・金額・保留項目)をその場でメール送信し、AJから内容確認の返信をもらうことで書面化に代えます。返信が得られない場合も送信記録自体を残し、後日の電話合意も同様に「本日のお電話のとおり◯◯円で確認しました」とメールで追記して返信を得ます。

画像挿入予定
立会確認書の記入例

3-4. 当事者(お客様)の合意が必須

3-5. 画像協定(リモート協定)― 立会なしで協定する場合

軽微な損傷や遠隔地のAJ対応などで、現車立会なし(写真・動画ベース)で協定する運用が広がっています。立会協定と同じ品質で合意するための標準手順です(適用基準は設定項目一覧#13)。


第4章 交渉の理論的根拠 ― 「支払われるべき額」の考え方

協定で意見が割れたとき、拠り所になるのは声の大きさではなく理屈です。この章の内容は、そのまま口に出すためではなく、慌てないための背骨として理解してください。

4-1. 何が「損害」か

保険の種類 支払われるべき額の考え方
対物賠償(相手方保険) 不法行為による損害=事故前後の財産状態の差額(差額説)。修理費はその損害額を算定するための代表的な手段
車両保険(自分の保険) 約款上の「損害」=事故直前の状態に復旧するために必要な修理費相当額

4-2. 立証責任と説明責任

「どの項目がどのような理由で不要とお考えなのか、どの金額がどのような理由で社会通念に照らして不当に高額とお考えなのか、書面でご説明いただけますか。」

4-3. 価格と工数の事業者裁量

4-4. よくある説明と、その受け止め方

保険会社側の説明 受け止め方・返し方
「担当(拠点)に決定権がない」 国交省ガイドライン⑦の観点では合理的な説明とはいえない。「では決定権のある方から、根拠を書面でご説明いただけますか」
「地域相場で決まっている」「他社にもこの価格でお願いしている」 国交省ガイドライン⑦が挙げる「不合理な説明」の例そのもの。「当店の単価は自社の原価と人件費に基づいています。算定根拠はお示しできます」
「指数対応単価は◯円と決まっている」 指数対応単価は本来、工場ごとに保険会社と取り決める単価であり、保険会社の社内単価が当店のレバレートを拘束するものではない(第5章・第14章用語集)
「実際に修理した経過・伝票の確認が必要」 対物賠償では未修理でも修理費相当額が損害となり得る(4-1)。確認要請には可能な範囲で誠実に協力しつつ、支払条件ではないことを整理する
「これ以上は払えません」(根拠なし) 4-2の書面説明要求へ。応答がなければ第10章の手順

※上記はあくまで「典型例と考え方」です。個々のAJ・保険会社を疑ってかかる姿勢ではなく、根拠を確認し合う姿勢で使ってください。


第5章 指数の実態 ― 指数は「参考資料」である

5-1. 指数とは何か

5-2. 指数の中身 ― 指数≠実作業時間

指数には、正味の作業時間以外の要素が内包されています。分解して理解しておくと、「指数の時間内で終わるはず」という誤解に冷静に対応できます。

《例》分解イメージ:プリウス(ZVW30)リヤゲート交換 指数1.90(1時間54分)の場合 - 指数 = 正味時間 + 準備時間0.33 + 余裕時間(正味時間の30%) - 逆算すると正味時間 ≒ 1.21 - うち2人作業分 0.40 を控除 → 0.81 - 水密テスト 0.3・立付調整 0.1 を控除 → 実質の脱着正味時間 ≒ 0.41(約25分)

つまり指数1.90の内訳の過半は、準備・余裕・複数人作業・付帯検査です。「指数=1人がその時間ずっと手を動かす時間」ではありません。 ※本例は、指数の構成(正味時間・準備時間・余裕率等)の考え方を理解するための社内研修用の試算例です。数値は車種・年式・指数テーブルの版により異なるため、実際の協定でこの分解を用いる場合は、最新の指数テーブル・指数構成資料と自店の実測記録で確認してください。

5-3. 工数の裁量と「水増し」の一線


第6章 レバレート(工賃単価)の算定根拠

6-1. なぜ算定根拠が必要か

6-2. 算定の標準ロジック(レバレート算出ツール)

シューリーズ標準の「レバレート算出ツール」は、鈑金塗装部門の損益から必要単価を逆算します。

① 実作業時間 = 年間稼働日数 × 8h × 直接工員数 × 稼働率
② 損益レバレート =(販管費 − 部品・塗装材料・外注の粗利)÷ 実作業時間
   ……現状の費用構造で損益トントンになる単価
③ 算出レバレート = 損益レバレート × 人件費変動率 ÷(1 − 計画営業利益率)
   ……人件費上昇と適正利益を織り込んだ、下限として必要な単価
《参考例:清田自動車》
  • 総労働時間:260日 × 8h × 直接3人 = 6,240h、稼働率0.68 → 実作業時間 4,243.2h
  • 損益レバレート = 7,639.6円/h
  • 算出レバレート = 7,639.6 × 人件費変動率(+1.44%) ÷(1 − 計画営業利益率8%)= 8,423円/h この算定書を提示できる状態にしておくことで、「単価の根拠」を問われた際に決算実態と直結した説明ができます。

8,423円/hは算出ツール上の「最低必要単価(下限の根拠値)」であり、実際の請求単価そのものではありません。実請求単価は、算定年度・稼働率の前提・作業の難度やリスク・地域の市場水準を加味して各店が決定します(清田自動車の実請求単価の参考例:国産車10,000円/h・輸入車13,500円/h。見積もりマニュアルの《参考例》と同じ値)。算出ツールの値は「これ未満では損益が成り立たない」ことを示す説明資料として使います。

6-3. 塗装材料費の計上

《参考例:清田自動車》

算出塗装材料比率 = 18.53%(分母=塗装工賃売上、計画材料利益率15%で算定)。塗料価格の高騰局面では毎期見直します。

6-4. 業界の動き(参考)

6-5. 単価は各店が独立に決める(独占禁止法上の注意)


第7章 時価額・全損・評価損・対物超過

修理費が大きい案件では、協定は「修理費」から「車両の価値」の議論に移ります。フロント担当が最低限押さえるべき考え方をまとめます。

7-1. 時価額 ― 中古車市場で買い直せる金額が基準

7-2. 全損 ― 時価額を基本に、消費税・買替諸費用を別途検討する

7-3. 評価損(格落ち)

7-4. 対物超過修理費用特約

画像挿入予定
修理着工前確認書(対物超過)の様式

第8章 代車費用と期間の相当性

8-1. 基本の考え方

8-2. 代車期間内訳書 ― 期間を「工程」で説明する

期間の相当性は、感覚ではなく工程の内訳で説明します。標準様式「代車期間内訳書」の項目:

入庫日 → 代車貸出日 → 立会日 → 協定日 →(お客様の検討期間)→ 部品発注
→ 部品入荷 → 鈑金着工〜終了 → 塗装待ち → 塗装着工〜終了 → 仕上げ・検査
→ 納車連絡 → 納車日 → 代車返却日
画像挿入予定
代車期間内訳書の記入例

8-3. 日額・車格


第9章 外部第三者機関(DAA)の活用

9-1. DAAとは

書面 内容 使いどころ
損害調査報告書 損傷範囲・修理方法・修理費相当額の第三者調査 修理費の協定が難航したとき
時価額調査報告書 実勢市場価格+購入諸費用ベースの時価額算定 全損・時価額の提示に乖離があるとき
評価損調査報告書 修復歴による市場価値下落の調査 評価損の立証が必要なとき
意見書 係争中の論点への第三者意見 弁護士案件・訴訟段階(専門家と連携)

9-2. いつ・どう使うか


第10章 協定が難航したときの対応(エスカレーション)

ほとんどの協定は第2章のフローで合意に至ります。本章は例外対応です。段階を飛ばさず、必ず下から順に踏んでください。各段階とも、判断はエスカレーション責任者(設定項目一覧#9)が行います。

10-1. 段階0:記録の整備(常時)

10-2. 段階1:算定根拠の書面説明要求

10-3. 段階2:国土交通省の情報提供窓口

10-4. 段階3:金融庁への情報提供・中立的窓口の案内(最終手段)

10-5. 使用しない・原則封印の手段

次の2つは、過去に業界内で用いられた例がありますが、加盟店の標準対応としては原則使用しません。関係悪化のコストが大きく、実効性も限定的です。


第11章 お客様への説明 ― 協定はお客様の権利

11-1. 協定の主役はお客様

11-2. 節目ごとの説明(受付マニュアル第6章 6-4 と接続)

11-3. 説明のトーン


第12章 やってはいけないこと(NG集)

# NG行為 なぜダメか
1 免責金額を値引きで相殺し、保険請求だけ満額にする 実質的な水増し請求。保険金詐欺に問われ得る
2 実作業と乖離した工数の上乗せ・架空項目の計上 不正請求。立証できない工数は計上しない(第5章 5-3)
3 事故と無関係の損傷を事故損害として計上する 不正請求。既存損傷は受付時に区別して記録(受付マニュアル第4章)
4 協定成立(金額確定)前の着工・納車 交渉材料を失い、未払いトラブルの典型パターンになる
5 お客様不在で協定金額を最終決定する 損害額の当事者はお客様。法的リスク(第3章 3-4)
6 口頭合意のまま書面化しない 担当者交代・後日の減額要請に対抗できない(第3章 3-3)
7 保険案件だけレバレートを吊り上げる 恣意的価格差の禁止(国交省ガイドライン⑥)。係争時に致命傷
8 示談交渉・過失割合交渉の代理 弁護士法上の制約。当店は技術説明まで(第1章 1-2)
9 「金融庁に通報するぞ」等を交渉の脅しに使う エスカレーションは手順と発動基準に従う(第10章)
10 特定の保険会社・担当者の批判をお客様やSNSで発信する 加盟店全体の信用問題。論点で交渉し、人を攻撃しない
11 電話口で等級・支払可否・過失割合を断定する 保険会社・代理店の領分(受付マニュアル第6章 6-3)
12 相見積・他店見積の批判 品質と根拠で選ばれる。他店を下げて取る案件は続かない

第13章 協定チェックリスト(案件ごとに使う)

入庫〜立会前

立会〜協定

着工〜納車

難航時


第14章 用語集

用語 意味
AJ(アジャスター) 保険会社の損害調査員。技術アジャスターは損傷の調査・立会・協定を担当する。修理の「買い手」ではなく、損害調査への協力を仰ぐ立場
協定 損害額(修理費相当額)について、修理事業者とAJが協議して合意すること。当事者(お客様)の合意があって完結する
指数 自研センターが作成する標準作業時間の目安(1.0=1h)。準備・余裕・複数人作業・付帯検査を内包する。法的拘束力のない参考資料であり、作業条件が前提と異なる場合は実際に要した作業時間を客観的に示して請求できる(国交省ガイドライン③)
指数対応単価 指数1.0あたりの工賃単価。本来は工場ごとに保険会社と取り決める工賃単価であり、保険会社が社内で一律に定めた単価が当店のレバレートを拘束するものではない
レバレート 工賃の時間単価。自社の費用構造・人件費・計画利益から事業者自身が算定・設定する(第6章)
損益レバレート/算出レバレート 損益トントンになる単価/人件費変動と計画利益率を織り込んだ設定単価(レバレート算出ツール)
修理四原則 性能回復・安全性・耐久性・美観。妥協してはならない品質の下限
時価額 同等車を中古車市場で取得するのに要する価額(最判昭和49年4月15日・民集28巻3号385頁の趣旨)。消費税・買替諸費用は判旨そのものではなく別途の損害項目として分けて検討する(第7章 7-1)
全損 物理的全損(修理不能)/経済的全損(修理費>時価額)。経済的全損で買替が相当な場合は、時価額に加えて消費税相当額・相当な買替諸費用を別途検討する(費目ごとに可否が分かれる。第7章 7-2)
評価損(格落ち) 修復歴等により市場価値が下落した分の損害。対物賠償で請求し得る(車両保険は対象外)
対物超過修理費用特約 修理費が時価額を超える場合の差額を一定額まで支払う特約。実修理・期限等の約款条件と契約者本人の意思確認が前提
免責金額 車両保険の自己負担額。値引きでの相殺は禁止
立会 AJが現車を確認し、当店と損傷範囲・修理方法をすり合わせる場(第3章)
立会確認書 立会・協議で合意した金額をその場で書面化する様式。AJのサインが得られない場合はメール記録で代替する(第3章 3-3)
画像協定(リモート協定) 現車立会なしに写真・動画とメール等の記録で行う協定。合意金額のメール記録が立会確認書の代替になる(第3章 3-5)
損害確認シート 部位別の損害調査記録。記号は ✓(損傷なし)×(交換)B(鈑金)P(ボカシ)D(脱着)
入庫確認書 入庫時にお客様と交わす書面。調査の委任・入金先・未成約時費用・保証等を定める
レッドブック 中古車価格ガイドブックの通称。予測値で消費税・諸費用を含まない等の限界があり、市場実勢データで補正して用いる
差額説 損害=事故前後の財産状態の差額とする損害賠償の考え方。対物賠償では未修理でも修理費相当額が損害となり得るが、消費税・買替諸費用・特約の扱いは実修理/買替の有無が影響する(第4章 4-1)
弁護士費用特約 お客様の保険に付帯される、弁護士費用等をカバーする特約。第三者機関の調査費用が対象になる場合もある。難航案件では必ず有無を確認
DAA 一般社団法人 事故車損害調査協会。第三者の立場で損害調査・時価額調査・評価損調査の報告書を発行する機関(第9章)
国交省ガイドライン 「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」(令和7年3月4日・国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課)。規制的性質を持たない行政指針であり、本書の重要な参考基準(第1章 1-3)
そんぽADR/交通事故紛争処理センター 裁判によらない中立的な紛争解決・相談窓口。お客様に情報として案内する選択肢のひとつ

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